取材ノート
ミートボールで有名なあの会社は、マニアックな野菜好き集団だった!?

「面白いスポットがある!」との噂を聞きつけ、千葉県船橋へ。
目的地は、“イシイのミートボール”で有名な石井食品のコミュニティハウスViridianです。

館内には、自社製品がずらりと並ぶ直売店や、それらを食べられるレストラン、キッチン付きのワークショップルームまで完備され、地域の子育てママたちでにぎわう居心地のよい空間でした。季節によって様々なイベントも企画されているとのこと。お邪魔した日は地場野菜のマルシェが開催中で、新鮮な野菜がところ狭しと並んでいました。確かに面白いスポットです。

さて、直売店の棚にはミートボールだけでなく、聞き慣れない産地の野菜を主役にした商品も見られました。これは、なにやらマニアックな匂いが・・・。

せっかくなので、石井食品株式会社 広報チームの方々にお話を聞いてみました。

左から広報担当リーダー 蜂谷さん、取締役執行役員 石井さん、広報担当 阿部さん。

ミートボール専門店だと思っていたので、他の商品が多いことに驚きました。

元々当社は佃煮屋だったんですよ。船橋ではアサリやシジミがよく採れまして、それを佃煮にして売っていたわけです。戦後になってたんぱく質の供給が必要となり、煮豆もつくって売るようになりました。当初、煮豆は量り売りして売っていたのですが、それでは日持ちがしない。そこで真空パックにして売りはじめたのです。業界初のことでした。その真空パックがその後のミートボールの商品化に繋がっています。

へぇ、そうなんですか!
ところで、ミートボールの商品化はいつですか?

初代商品は1974年に発売しました。日本は戦後の食糧難から豊かな時代へと移り変わり、お惣菜のニーズも多様に変化していきました。新商品開発にあたり、和食の場合は地域によって味付けを変える必要がありますが、中華や洋食ならば全国同じ味付けでいけるのではと考えて生み出された商品のひとつが「ミートボール」でした。
 
発売当初は、現在のものよりも粒が大きく味付けは中華風でした。その5年後、子どものお弁当に入れやすいよう粒を小さくして、パッケージをメルヘン調にリニューアルし、味付けも子どもに好まれるトマト味に変更したところ大ヒット商品となりました。

1974年発売の初代ミートボール

1979年「おべんとクンシリーズ」にリニューアル

現在は、品質保証番号や鶏肉の産地なども記載。

現在のパッケージには「無添加調理だから」とありますね。
食品添加物を使用していないということですか?

はい、そうです。素材が本来持つおいしさを追求し、またお母さんがつくるおいしさを目指して、1997年より当社での製造過程においては食品添加物を使わない「無添加調理」へと切り替えていきました。現在はすべての商品において実施しています。

買い手としては嬉しい取り組みですが、
切り替えていくのは大変だったのではありませんか?

確かに社内の意識改革は大変でした。食品添加物は大量調理・大量生産において味を均一にするなど大変便利なものです。それを使わないということは味のごまかしが効かないということ。素材そのものの良し悪しがダイレクトにおいしさに反映されるため、より新鮮で良質な素材の調達が必要となりました。

現在は当社社員が直接現地に赴いて農家さんとコミュニケーションを取りながら、いちばんおいしい時期と産地を見極めた「厳選素材」を調達しています。また、調味料などを仕入れているメーカーにも食品添加物を使わないよう協力をお願いしました。

逆に無添加調理に取り組んでよかったことはありますか?

あります。例えば、卵白には匂いを消すマスキング効果がありますが、新鮮な鶏肉を厳選して使えば、その必要は無くなります。このように原材料の引き算を行うことで、食物アレルゲンである乳・卵を使わずに、ミートボールやハンバーグを作ることができるようになりました。食物アレルギーをお持ちの方でもおいしく食べられ、笑顔になっていただけることが無添加調理に取り組んでよかったことの一つですね。

館内のディスプレイを拝見すると、山梨や愛知など“地域と商品をつなげる”取り組みもされているようですね。きっかけと具体的な取り組み例を教えてください。

日本各地にあるおいしい素材を探していた際、生産者の方から後継者問題や地域活性化に対する思いなどを聞いたことがきっかけです。そして、各地域の旬の食材を使って地元の味を再現し、食を通じて地域活性化を行っていこうという取り組みが始まりました。取り組みから生まれた商品が地元の方々に好評いただいたことから、更なる地域活性化のために行政とも組んで商品化を行っています。

【取り組み例】

山梨県大月市産
玉ねぎがつまったハンバーグ


愛知大府市
木之山五寸にんじん まぜごはんの素

その他詳細は、こちらをご覧ください。

“地域の栗きんとん”シリーズは面白いですね。

これはぜひ味くらべしていただきたい商品です。無添加調理だからこそ、地域ごとの栗本来の色と風味を堪能することが出来ます。昨シーズンは、青森県弘前、茨城県笠間、千葉県成田、長野県小布施、岐阜県山県、京都府京丹波の6種類を商品化しました。
 
製造時には当然ながら、色を鮮やかにする着色料や煮崩れを防ぐミョウバンを使いませんから、シミ栗の原因でもある鮮度の劣化や煮崩れを防ぐことに尽力しなければなりません。かつては収穫した栗を海外の工場へ送って皮剥き加工をお願いしていましたが、素材の良さを生かすためにも国内工場にて人の手で一つ一つ剥くことになりました。毎年栗の収穫シーズンは部署に関係なく社員総出で工場へ栗の皮剥きに行きます。もちろん私たちも皮剝きに行きますよ!

本当に社員総出とは!(驚)
生産者さんとみなさんの真心がこもった商品ですね。
ちなみに、みなさんのお気に入り商品を教えてもらえますか?

阿部さん:
「有明鶏のかしわめし」です。佐賀県産の有明鶏がごろごろ入っていて、さらに国産ごぼうとにんじんが芯までしっかり味付けされているまぜごはんの素です。ご飯を食べても具を食べても全部がおいしい、これだけでおかず1品に相当する商品です。

蜂谷さん:
「工場直送ミートボール」です。幼い頃からミートボールを食べて育ちましたが、入社して初めてこの“ソースなしのミートボール”を食べた時に「ソースがなくてもこんなにおいしいんだ!」と感動しました。下味はついていますが、新鮮な鶏肉、加熱すると甘みが増す玉ねぎなど、素材を厳選しているからこそソースがなくてもおいしいんだなぁ…と今でも大好きな一品です。

石井さん:
「中華丼」です。ミートボールのような洋食と並行して、先代が夫妻で中華料理のソースや惣菜を研究して開発していた時期がありまして、その名残の商品です。ご飯にかけても、揚げ麺にかけてもおいしく食べられます。
 

それから最近の商品では、「サクラマスのまぜごはんの素」も好きですね。富山で養殖されたサクラマスを使ったお土産ですが、本格的なご飯が作れます。こちらはサンプルの段階でおいしいと思った当社商品の新境地です。

どの商品もおいしそうでお腹が鳴ってしまいます(笑)
蜂谷さんお気に入りの工場直送ミートボールは、私もいただきましたがシンプルな味わいで、アレンジもしやすく、冷蔵庫に常備したい商品でした。

後編へ続きます)

取材協力・画像提供:石井食品株式会社 広報担当(阿部さん)
TEL:047-435-0141(本社代表)

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written by

タナカトウコ

/取材・文

野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
ホームページ http://urahara-geidai.net/prof/tanaka/
インスタグラム toko_tanaka