今回も野菜ソムリエが評価員となり、産地・品種・生産者などすべての情報を伏せたブラインドによって食味評価を行います。A〜Eのグループに分けられ1人あたり40個前後のいちごを丁寧に評価していきました。
今回の選手権に参加した評価員たちの声をご紹介します。
【大阪会場の声】
●野口 知恵 さん(野菜ソムリエ上級プロ)
会場のビルに入った瞬間からいちごの香りが漂い、それぞれのストーリーがあるいちごと向き合う気持ちになり背筋がピンと伸びました。私は39品を食味させていただきました。味わいながら1つずつ、こんな想いで育てられたんだろうな、やっぱりこの品種はこの特徴なんだなと一度に味わうことで色々感じました。同じ品種でも生産者の方が違うとこんな風に違うんだなとも思いました。
甘さが前面のいちごが多いのかなと思っていましたが、そうではなく、ほどよい甘さと酸味があるものが全体的に多かったことと、果肉もしっかりめが多かったことが印象的です。どんな場所やどんな作り方なのかなといちごと会話しながら1つずつ味わわせていただきました。
●立花 尚子 さん(野菜ソムリエ上級プロ)
大阪会場は初開催でしたので、全国のいちごに出会える期待と、丹精込めて作られた青果を評価するという緊張が入り混じりながらも、一粒ずつしっかり味わいながら評価させて頂きました。担当したいちごは40個。なかなか一度にこの数のいちごを食することはありません。印象的だったのは全体的に濃厚な甘みといちごらしい爽やかな酸味も併せ持つ糖酸のバランスの良いいちごが多かったこと。本当に甲乙つけ難かったです。ただ、受賞したいちごを振り返った時、他より抜けている上品な個性があったように思いました。
私の住む滋賀県の生産者さんも全国いちご選手権へのエントリーが増えています。そして毎回受賞者が出ているため、生産者さん同士が刺激を受けてエントリーされているようですが、エントリーするというアクションによって得られる「喜び」が伝播して地域が活性するきっかけになれば、野菜ソムリエとして、そして評価員として嬉しく思います。そのために私自身も自己研鑽を積むことを改めて誓った全国いちご選手権初参加となりました。
【東京会場の声】
●増田 純代 さん(野菜ソムリエプロ)
いちごの甘く芳醇な香り漂う会場に入るとテーブルからはみ出しそうなくらいいっぱいのいちごが並べられていて、それは圧巻の風景でした。東京会場は約200品を担当。昨年に比べて大粒が多い!というのが第一印象。標準のいちごの味を確認してから縦半分にカットして断面もチェックしつつ、ヘタに近い部分から先端までしっかり味わいます。見た目の肌ツヤ、粒感そして香りも感じながら評価用紙に記入。どれもクオリティが高い!1粒ずつ向き合っていると酸味、甘み、ジューシーさ、果肉の硬さなど不思議と生産者さんの想いやこだわりが伝わってきます。私が担当したグループは昨年より酸味をしっかり残しているいちごが多いと感じました。糖酸バランスが良く濃厚な味わいのいちごの多さに1番を決める難しさは昨年以上でした。
昨今の気候変動、資材燃料等の高騰で生産者さんのご苦労は計り知れません。そんな環境の中、この日に合わせて出荷された生産者さん全員に金賞をと思ってしまいます。コメント欄は時間が許す限り丁寧に書かせていただきました。少しでも励みになれば嬉しいです。結果は今年も埼玉県の「あまりん」強し!
●庄内 菜穂子 さん(野菜ソムリエプロ)
今回は「春いちご」の選手権ということで、心も弾み会場入りしました。その扉を開けるやいなや、甘い香りが溢れ、立派ないちごがずらりと並ぶ光景は圧巻!40個以上の食味は初めてで、香りや色艶など含め五感の集中維持に努め、じっくりと評価を進めましたが、どのいちごも個性に溢れ美味しく、総合評価の難しさも感じました。野菜ソムリエとしての評価力はもちろん、丹精込めていちごを育てた生産者さんに伝えるコメント力も磨かなければと感じています。
評価後は気になっていた大阪会場含めた出展者情報も確認でき、出品数は昨年の倍以上にも関わらず、準備からスピーディな結果発表まで完結された事務局スタッフさんの力にも敬服です。格別においしいいちごに出会え、勉強にもなる品評会に参加でき、有難く幸せな時間でした。そして、今回も『クリスマスいちご』選手権に続き久米原農園さんが最高金賞を受賞され、報道番組での取材時のお言葉からも、生産者さんのストレートな想いとご尽力があってこその連覇なのだと感じ入りました。最高金賞だけでなく、今回受賞されたいちごを、家族友人はもちろん、少しでも広くその美味しさと価値を伝えていきたい!と思っています。
●村上 由実 さん(野菜ソムリエプロ)
いちごは好きなフルーツランキングでも上位。その分注目度も期待値も高くなり、評価員としての緊張感も他の品目とは比べ物になりません。今回の選手権も、洗練された逸品揃いの戦いで、改めてこの場に参加できることを誇りに思えるような機会になりました。受賞された出品者の皆様、おめでとうございました。
●牧野 悦子 さん(野菜ソムリエプロ)
第3回全国いちご選手権で埼玉県の「あまりん」が最高金賞を受賞し、埼玉の野菜ソムリエとしてたいへんうれしく思います。 特に埼玉県で育成されたいちごの連続受賞の快挙は、埼玉県の育種技術とポテンシャルの高さ、生産者の努力が結実した証だと思います。40個以上の食味審査は非常にたいへんでしたが、出品された生産者の方のことを思いながら真摯に向き合いました。一粒一粒しっかり味わい、甘さ、酸味、香り、食感のバランス等を厳しく評価し、自分なりの「おいしい」を判断しました。全国から集まった素晴らしいいちごの中から選ぶのは非常に難しいものでした。 その中で「あまりん」は食べた瞬間に際立つ濃厚な甘さとほのかな酸味が、評価員の心をつかんだのではないかと思います。「いちごは人を笑顔にする食べ物」だと思っています。 今後も多くの人にいちごの美味しさが届くことを期待しています。受賞された皆様、本当におめでとうございます。また出品された皆様、素晴らしいいちごをありがとうございました。
●渡辺 実 さん(野菜ソムリエプロ)
評価員としてさまざまな「おいしいいちご」に触れることができ、ありがたかったです。おいしさといっても、様々で、大きさ、色などの見栄えや味、香り、食感などの個性に触れることができ大変勉強になりました。生産者にフィードバックする感想も、評価数がかなり多く、記載する時間が足りなかったです。また、この評価会で、おいしいと評価される今時点でのいちごの味の傾向や同じ品種の中でも、味のばらつきが感じられるなどの現状の一端を知ることができました。今後この経験や評価会の様子をフィードバックするなど、何らかの形で、生産者やその関係者の方々のお役に立てればと思っています。評価会を主宰していただいた日本野菜ソムリエ協会の皆様、準備に携われた皆様に、感謝申し上げますとともに、皆様の今後の発展をお祈りいたします。ありがとうございました。
●本間 純子 さん(野菜ソムリエプロ)
今回私は事前のお手伝いから入らせていただきましたが、驚くべきはそのレベルの高さ。丁寧にパック詰めされたいちごは、満遍なく赤く色付きピカピカの輝きを放っています。大粒で立派なサイズのものも多く、ピンとそり返った葉っぱはどこか誇らしげ。デパートなら1粒で1,000円はしそうなエース級のいちごが勢揃い。キッチンお手伝い班のみなさんが水を張ったボールで丁寧にゆすり洗いし、ペーパーで優しく水分を拭き取ります。私はひたすらキッチンと会場を往復してナンバリングされた場所へいちごを配り続けました。
会場準備を終えいざ評価へ。評価員として万全の体調で臨む事はもちろんですが、自分の味覚や嗅覚をより研ぎ澄ます為に、しばらくの間コーヒーやアルコールをおやすみし、当日の朝食は会場入り4時間前に味の薄いもので軽く済ませて挑みました。私が担当したいちごは43個。生産者さんへのリスペクトと感謝を込めてコメントを書きながら評価シートをつけました。縦半分にカットしてひと通り食べ、気になったものをピックして2巡目の評価を行ったのですが、甲乙つけ難いエース級の個性がぶつかり合う中、五感で「美味しい‼︎」と強く感じたいちごをNo.1に選ばせていただきました。つくり手のみなさんの思いが詰まったいちごと向き合う選手権。私だけじゃなく会場にいるすべての評価員が同じ様に全集中で真摯にいちごと向き合い続けました。終わった時はいつも抜け殻の様になってしまいますが(笑)
会を増す毎にレベルが高くなる「いちご選手権」。これからも野菜ソムリエとして評価員で携わらせていただきたいと思うとともに、たくさんの素晴らしいいちごを1人でも多くの方にご紹介していきたいと改めて強く思いました。エントリーいただきました生産者の皆様、協会スタッフの皆様、すばらしい機会をありがとうございました。
●橋場 朋美 さん(野菜ソムリエプロ)
第3回いちご選手権はありがたいことにお配り係からお手伝いさせていただいた私。自分の座る席ではないグループのいちごを配ります。もちろん自分が担当するいちごの生産者様がわからないようにするためです。なんという幸せで、なんと責任の重いお仕事なのでしょう(皆様のお仕事の方がはるかに責任重大ですが)。ピカピカに輝くいちごはひとつひとつが生産者様の命の結晶。お配りするいちごは全て違う生産者様の宝物。配るだけのはずなのに、緊張感に押しつぶされそうでした。ノーミスでお配りの仕事を終えてまずは一安心。そして着席。「私が配っていない」いちごが目の前に広がります。他のグループとはまた全然違ういちごたち。この44個の宝石を大事に評価させていただきました。
総評としては、今までと違って「甘い」を強調するより、「甘さと程よい酸味とのバランス」を重視したものが多く感じました。今までの審査は途中で甘さにやられてきつく感じることもありましたが、今回私のグループのいちごは全体的にバランスが整っていたからか、どんなに食べても辛くなることはありませんでした。ですので、最後の方でもフラットに評価出来たと思います。口の中に最後に残るものが何か?甘みなのか酸味なのか?たまに渋みが残るものもありますが、それが嫌ではなく、その渋みすら一つのいちごの味の構成として成り立っていると評価出来るものも多くありました。今回もテレビ局の撮影が入り、私のコメント「いちご疲れ、幸せ〜♡」が放送されました。疲れるほど真剣に評価させていただき、受賞された方々の人生が一気に変わる瞬間に立ち会えたことはとても幸せなことであり、また重大な責任を負うことになります。どのいちごも素晴らしく、甲乙つけられないが評価員の本音。受賞を逃したとしても、生産者様には「うちのいちごはおいしい!」と胸を張ってこれからもいちごをつくっていただきたいです。
●勝田 紀久子 さん(野菜ソムリエプロ)
昨年に引き続き、今年もこの時期寒波に襲われ、いちごが無事に届くか、私自身も会場へ行けるのか、様々な不安がありました。今回3回目の選手権、12月開催も含めると5回目の全国いちご選手権ですが、回を重ねるごとに出品数が倍以上になり、今回の380以上という応募数は驚愕でした。それだけ生産者の皆さんが、この選手権に賭けていること、この選手権の重みを感じます。評価員を務めさせて頂く私たちの責任も重大です。「いちごが食べられて嬉しい」そんな雰囲気ではありません。会場内には緊張感が張り詰め、皆さん真剣そのものでした。
私は野菜ソムリエ、いちごソムリエとして、生産者さんから選手権出品にあたってのご相談を受けることもあります。生産者の皆さんが心を込めて作ったいちご、「選手権を通して、自慢のいちごをもっと知ってほしいんです」「私たちの取り組みを知ってほしい」「この選手権は腕だめし。野菜ソムリエさんたちのコメントがいただけることもありがたいんです」そんな生産者さんたちの声をお聞きしています。生産者さんに敬意を払い、コメント1つにも心を込めます。いちご1粒に全集中。時期的なこともあって大粒が多く、ナイフでカットしながら評価させて頂きました。濃い甘味のもの、酸味のバランスが秀逸なもの、花のような香りで余韻が長いもの、適度な硬さ、滑らかな舌触り、それぞれに魅力があります。甘味が薄いと感じるものは殆どなく、年々レベルが上がっているのを感じました。
今年もあまりんが多く受賞していますが、個人的には、数年前に食べたあまりんよりも、今のあまりんのほうがおいしいと感じています。今のあまりんブームは、選手権を通して話題になっているということだけでなく、実際に味のクオリティも上がっているからだと思います。品種の持つポテンシャルも素晴らしいですが、それを最大限に引き出すのはやはり生産者さんの力です。最高金賞を受賞された久米原さんも、「悲願だった」と涙ながらに受賞の喜びを語られていました。この選手権を1つの目標として、力を入れられていたことが伝わってきます。気候変動により栽培が難しくなっている状況下でも、もっとおいしいいちごをつくるんだと、生産者の皆さんが日々試行錯誤で、休む間も無く、生産者さん同士が切磋琢磨して、丹精込めて栽培されているからこそです。この選手権は、その一翼を担っているとも言えるので、野菜ソムリエの私たちも、より真摯に向き合わなければいけないと思いました。
審査結果は以下の通りです!
※敬称略(販売時の商品名/出品農家・団体名/生産地)
最高金賞
「あまりん~極~」
久米原農園 8代目 美幸
(埼玉県本庄市)
久米原農園八代目久米原美幸さんは2024年12月の「第2回クリスマスいちご選手権」にて「べにたま-X-」が最高金賞に輝き、冬いちごと春いちご双方の評価会にて日本一に選ばれました!
<評価員のコメント>
・どこまでも甘さの余韻が続く。これが生のいちごとは信じられないほどの甘さの極み
・ヘタ近くまで濃厚な甘さがある!一粒でごほうびになる
・とても香りが濃厚で匂いだけでもうおいしい!大ぶりのイチゴは味が淡泊になってしまうイメージがあったがこのイチゴは甘さが濃く、華やかなあじわい
<生産者のこだわりポイント>
何度も食べ比べ、[味] [色] [艶]で判断し、あまりんの中で最も優れた精鋭だけを箱に詰めました至高の一粒になります。誰が食べても記憶に残り、[もう一度食べたい]と思っていただけるよう努力しております。
<お問い合わせ>
■全国青果物選手権HP:

タナカトウコ
/取材・文・撮影
野菜ソムリエプロ、ベジフルビューティーアドバイザー。薬膳や漢方の資格も複数保有し、「食」を軸に多角的に活動中。書籍に「日本野菜ソムリエ協会の人たちが本当に食べている美人食」「毎日おいしいトマトレシピ」「旬野菜のちから−薬膳の知恵から−」等がある。
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