ひと足お先に夏本番を迎える沖縄は、亜熱帯ならではのマンゴー、バナナ、パパイヤ、ドラゴンフルーツ、パッションフルーツなどの果物が満喫できるトロピカルフルーツ天国。中でもパイナップルは4月から9月にかけて収穫期を迎えます。パイナップルは酸性の土壌を好むため、ほとんどが沖縄本島北部と八重山諸島の石垣島や西表島など限られた地域で生産されています。

農林水産省が発表した令和5年産果樹生産出荷統計の出荷量を見ると、沖縄県全体の出荷量6,550トンのうち、生食向けが4,690トン、ジュースや缶詰などの加工向けが1,880トンとなっています。その内訳は、沖縄本島の出荷量3,530トンのうち、生食向けが1,830トンで、加工向けが1,700トン。八重山の出荷量2,990トンのうち、生食向けが2,830トンで、加工向けが157トンとなっています。
パイナップルの歴史と種類
パイナップルは、松ぼっくりに似た形状であることから「パイン(松)」、フルーティで甘い香りが似ていることから「アップル(りんご)」がその名の由来といわれています。パイナップル科アナナス属に分類される植物で、地面から硬く細長い葉が放射状に伸び、株の中心から伸びた茎の先端に花を咲かせ、その花の下の部分がふくらんで実となりますが、苗を植えてから収穫までには2年から3年を要します。
原産地はブラジルとされており、1492年にコロンブスが新大陸を発見し、探検した際にヨーロッパへ持ち帰ったのを機に、世界各地へ広まったのだとか。17世紀にはヨーロッパ貴族の温室で栽培を試みたこともあったようで、18世紀には熱帯や亜熱帯地域で広く栽培されるようになったといいます。
沖縄へ伝来は、1866年に石垣島の沖で座礁したオランダ船からパイナップルの苗が川平湾に漂着したのが始まりとされています。沖縄本島へは1888年に小笠原から導入され、1927年には現在も主力品種であるスムースカイエン種(通称ハワイ種)が導入されました。
世界には200種類を超える品種があるといわれる中、沖縄では主に4種類ほどが生産され、直売所などの店頭に並んでいます。いち早く収穫が始まるのは、手でちぎって食べられることから「スナックパイン」とも呼ばれる小ぶりな「ボゴール種」と、ほのかに桃のようなフルーティな香りが楽しめて糖度も高い「ピーチパイン」で、5月中旬から6月の中旬に最盛期を迎えます。続いて5月下旬から7月にかけて収穫期を迎えるのは沖縄産パイナップルの最高級品種といわれる「ゴールドバレル」です。1玉で1.5kg、中には2kgを超えるものもある大玉で、とびきり甘みが強く、酸味が控えめで、繊維が柔らかいのが特徴ですが、栽培に技術を要するため希少な品種です。6月から7月にかけては主力品種の通称「ハワイ種」と呼ばれる「スムースカイエン種」が店頭に並びます。甘みと酸味のバランスがよく、パイナップルらしい香りは、まさに王道の味わいです。他にも、酸味が少なく甘みが際立つ「サンドルチェ」、甘酸っぱい爽やかな味わいの「ジュリオスター」、柑橘系を思わせる香りが魅力の「サマーゴールド」、高糖度でミルクのような白い果肉の「クリームパイン」、酸味が控えめで甘さが引き立つ「ゆがふ」、ほのかにココナッツのような香りがする大玉の「ホワイトココ」なども栽培されていますが、いずれも生産量が少ないので、もし出逢えたら非常にラッキーだと思います。ちなみに、「ポコットパイン」は「ボゴール種」、「ジュワリーパイン」は「ハワイ種」のことで、JAおきなわが商標登録したブランド名です。
パイナップルの栄養学
生のパイナップルの100g当たりの栄養価を確認すると、51kcalと意外に低いので、ダイエット中の方にもおすすめです。特に注目したいのは体内でのコラーゲンの生成や美肌に欠かせないビタミンCで、100g当たり35mgと温州みかんよりも多く含まれています。また、体内の余分な塩分の排出を助けるカリウム、腸内環境を整えてくれる食物繊維も豊富です。さらに、たんぱく質分解酵素ブロメラインを豊富に含んでいますが、60℃以上の加熱で活性を失います。なお、舌がヒリヒリしたり、口の中が荒れるときは、たんぱく質分解酵素ブロメラインによる刺激、もしくは未熟なパインに多く含まれるシュウ酸カルシウムの針状結晶による刺激の可能性がありますので、舌や口腔粘膜が敏感な方は気をつけましょう。
パイナップルの選び方、保存法、調理の裏技
収穫後は追熟しないため、切り口が新鮮なものを選びます。全体の3~8分目ほどが黄色に色づいたものを目安に選びますが、緑がかった色でも底から甘い香りがしていたら食べ頃です。葉が枯れているものや切り口にカビが生えているものは、鮮度が落ちている場合があるので避けましょう。
保存の際は、糖分が下にたまるので、葉を下にして立てておくと、全体に甘みが均一に広がります。保存の目安は、常温なら2日、冷蔵庫なら7日です。カットしたものはラップで密封して冷蔵庫へ。たくさん入手したときは、ひと口大に切って冷凍保存するのがおすすめです。
たんぱく質分解酵素が豊富に含まれたパインの芯は、薄切り肉で巻いて焼いたり、肉とともに煮ると、肉が柔らかく仕上がります。細かく刻むか、すりおろして、ソースにしたり、きび砂糖を加えて煮詰めてジャムにしても美味です。もし食べてみて味が今ひとつだったパイナップルも、芯と同様に料理やジャムにすると、美味しく楽しめます。また、捨ててしまいがちな皮も、ソテーやとんかつなどにする肉を広げ、5~10分ほど密着させてかぶせておくだけで、料理の仕上がりが柔らかな食感になります。
鶏手羽元のパイナップル煮
パインの芯を捨てずに活用した一品です。生の鶏肉に薄切りにしたパイナップルの芯をからめておくことで、鶏肉が柔らかく仕上がります。一緒に煮たパイナップルの芯も美味しく食べられます。芯が硬いときは、すりおろしてもOKです。

材料(2人分)
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パイナップルの芯 |
1個分 |
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鶏手羽元 |
6本 |
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ゆで卵 |
2個 |
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水 |
100ml |
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しょうゆ |
大さじ2 |
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みりん |
大さじ2 |
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りんご酢 |
大さじ2 |
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おろしにんにく |
小さじ2 |
作り方
- パイナップルの芯は繊維を断つように斜め薄切りにします。
- 鶏手羽元と①をポリ袋に入れ、袋の外から手でよくなじませ、10分ほど待ちます。
- 鍋に水と調味料、おろしにんにくを入れてよく混ぜ、②と殻をむいたゆで卵を加えて火にかけ、煮汁が沸騰したら火を弱め、オーブンペーパーをかぶせて10分ほど煮て鶏肉を裏返し、さらに5分ほど煮て、鶏肉に火が通ったら出来上がりです。
*パイナップル科アナナス属
切り口が新鮮で、全体の3~8分目ほどが黄色に色づき、底から甘い香りがしているものを選びます。葉が枯れているものや切り口にカビが生えているものは避けましょう。
種類:「ボゴール種(スナックパイン)」、「ピーチパイン」、「ゴールドバレル」、「スムースカイエン種(「ハワイ種」、「サンドルチェ」、「ジュリオスター」、「サマーゴールド」、「クリームパイン」、「ゆがふ」「ホワイトココ」などがあります。