春野菜を代表する品目の一つである新たまねぎは、1月から出荷が始まり、3月から5月にかけて最盛期を迎えます。一般的なたまねぎは春まきや秋まきで栽培される「黄たまねぎ」の品種群で、収穫後に乾燥させてから出荷され、貯蔵に強く、生食すると特有の辛みを感じるのが特徴です。一方、新たまねぎは春に旬を迎える極早生や早生の「白たまねぎ」の品種群が中心で、収穫後すぐに出荷され、水分が多くてみずみずしく、辛みが少なく甘みのある味わいが特徴です。とりわけ葉付きのまま収穫された葉たまねぎは、たまねぎと長ねぎの両方のおいしさを楽しむことができます。
ちなみに農林水産省が発表した令和5年産野菜生産出荷統計でたまねぎ全体の収穫量を見ると、第1位は全国の収穫量の約2/3を占める北海道の752,500トン、第2位は兵庫県97,800トン、第3位は佐賀県97,600トンで、長崎県、愛知県、静岡県、熊本県、栃木県と続き、全国各地で栽培されているのが分かります。ちなみに、おなじみのたまねぎは2月上旬から九州産が出回り始め、季節とともに産地が北上し、8月上旬から翌年の5月にかけては北海道産が主に流通しています。
新たまねぎの歴史と種類
新たまねぎの歴史は明治44年、愛知県知多郡から静岡県浜名郡篠原村(現・浜松市篠原町)に移り住んだ生産者の加藤音吉さんが、知多から白たまねぎの種苗を持ち込んで栽培したのが始まりとされています。たまねぎは大正から昭和にかけて篠原村の特産として栽培が広がり、東京、横浜、大阪などに出荷され、村全体に栽培が広がっていったのだとか。戦争の影響で一時は麦などの作物に栽培転換したものの、戦後になって再び栽培や品種改良に力を注ぎ、昭和40年代には全国一の早出し産地になったといいます。また、たまねぎの名産地で名高い淡路島産、1月から収穫が始まる早出しの新玉ねぎを空輸することから「空飛ぶ新たまねぎ」と名付けてブランディングした宮崎県延岡市産なども、新たまねぎの中ではよく知られた存在です。
新たまねぎの品種としては「春いちばん」、「甲高球」、「トップゴールド」、「ソニック」などがあります。ちなみに、白たまねぎは、極早生種や早生種の皮が薄く白いたまねぎで、水分が多く、果肉が柔らかいのが特徴で、サラダオニオンとも呼ばれています。
新たまねぎの栄養学
たまねぎ特有の辛みと匂いの成分は、硫化アリルの一種であるアリシンによるもので、じっくり加熱すると辛味成分が甘みに変化します。新たまねぎにも辛み成分は含まれていますが、一般的なたまねぎよりも少なく、糖度が高く、水分量も多いため、辛みが控えめなのです。このアリシンは、消化液の分泌を促して消化機能を高めるほか、糖質のエネルギー代謝を助けるビタミンB1の吸収を促しますので、ビタミンB1を豊富に含む豚肉や大豆製品、糖質を含む炭水化物などと一緒に食べると、疲労回復に役立ちます。なお、特有の辛み成分は揮発性であるため、皿などに広げて空気に触れさせておくと、成分が揮発して辛みが和らぎますので、スライス後に水にさらして葉酸などのビタミンB群やビタミンC、カリウムなどの水溶性成分が流出するのを防ぎたいときは、ぜひ試してみてください。また、たまねぎにはオリゴ糖も含まれているので、腸内環境を整えるのにも役立ちます。
新たまねぎの選び方、保存法、調理のコツ!
購入の際は、カビなどがついておらず、色が白く、首が締まり、切り口から新芽が伸びておらず、持った時に重みを感じるものを選びます。軟らか過ぎるものは内部が傷んでいる場合があるので避けましょう。
新たまねぎは水分が多く、とても傷みやすいので、生鮮野菜と同様にラップでぴったりと包むかポリ袋などに入れ、冷蔵庫の野菜室で保存し、2~3日以内に食べきるのがポイントです。
おすすめの調理法としては、甘みが強く、辛みが少ないため、サラダやスライスオニオンなどの生食にぴったりで、辛みを抜くため水にさらす必要もありません。炒め物などに使う際は、強火でサッと加熱すると美味です。厚めの輪切りにして、ソテーやフライ、てんぷらにしたり、スープやみそ汁の具にすると、新たまねぎならではの甘みが引き立ちます。
新たまねぎとタコをコトコト煮込んだら、新たまねぎの甘みがグッと際立ち、タコの旨味が新たまねぎに染み込んで、それは贅沢な一品に仕上がりました。新たまねぎならではのトロリとした食感は、1人1玉ペロリと完食できてしまう美味しさです。お好みでタイムやローズマリーなどハーブを添えてもOKです。

材料(2人分)
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新たまねぎ |
2個 |
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ゆでだこ足(小) |
2本 |
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水 |
400ml |
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固形コンソメ |
1個 |
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酒 |
大さじ2 |
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白だし |
大さじ1 |
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みりん |
小さじ1 |
作り方
- 新たまねぎは皮をむき、上下を切り落とします。
- 鍋に分量の水、固形コンソメ、酒、白だし、みりんを入れて火にかけ、沸騰したら新たまねぎとタコの足を入れ、弱火で20分ほど静かにコトコト煮込みます。
- 新たまねぎに竹串を刺してみて、スッと通れば出来上がりです。
*ユリ科ネギ属
カビなどがついておらず、色が白く、首が締まり、切り口から新芽が伸びておらず、持った時に重みを感じるものを選びます。軟らか過ぎるものは内部が傷んでいる場合があるので避けましょう。
種類:「春いちばん」、「甲高球」、「トップゴールド」、「ソニック」などの品種があります。