菜果図録
冬季限定の旬の味覚 ちぢみほうれん草

 冬の寒さがもっとも厳しくなる12月から2月にかけて、ちぢみほうれん草が店頭に並びます。通常のほうれん草とは異なり、葉がちりめんのように縮れていることから「ちりめんほうれん草」とも呼ばれます。また、糖度を高めるため、あえて寒さにさらして栽培することから「寒締めほうれん草」の名前でも知られています。

 北海道、岩手県、宮城県、群馬県、栃木県、茨城県、山梨県、兵庫県の山間部など、寒さの厳しい各地で生産されており、農林水産省が提供する全国で取引された農作物の市況情報によると、全国の生産地から市場への入荷量は、2026年1月中旬のピーク時で約7.6トンとなっています。

ちぢみほうれん草の栽培方法と品種

 その発祥の地は宮城県東松島市で、30年以上も前から生産者が自家用に栽培していましたが、そのおいしさが注目されて人気が広がり、各地で栽培されるようになりました。ちぢみほうれん草は寒締め栽培という昔ながらの露地栽培で生産されています。厳しい寒さにさらされることで、少しでも多く日光を浴びようと地面に張り付くように葉を広げ、葉が縮まって厚くなり、自らが凍らないように水分を減らして糖分を増やすため、甘みが凝縮します。その結果、フルーツトマト並みに糖度が10度を超えることもあるのだとか。ちなみに、通常のほうれん草は種まきから収穫までが1か月ほどであるのに対し、ちぢみほうれん草はその2倍から3倍の時間がかかるのだそうです。

 ちぢみほうれん草の品種としては各種苗会社から「寒味・極み」、「雪美菜」、「寒締め吾郎丸」、「朝霧」などが発売されています。

ちぢみほうれん草の栄養学

 まずは通常のほうれん草100 g当たりの栄養価をチェックしてみましょう。体内でビタミンAとなり、粘膜や皮膚を健やかに保つのに役立つ、抗酸化力にもすぐれたβ‐カロテンは4200 μgで、数ある野菜の中でもトップクラスです。美肌や体内でのコラーゲンの生成に必要なビタミンCは温州みかんよりも多い35 mg、止血のビタミンと呼ばれるビタミンKは270 μg、赤血球の生産を助け、胎児の健やかな生育に欠かせない葉酸は210 μg、貧血を予防する働きが期待される鉄は2.0 mg、体内の余分な塩分を排出する働きをもつカリウムは690 mg、骨粗しょう症の予防に摂りたいカルシウムは49 mg、免疫反応の調整や味覚を感じる細胞の新陳代謝に関与する必須ミネラルのひとつである亜鉛は0.7 mg、腸内環境を整える効果で注目される食物繊維は2.8 g含まれています。また、赤い根の部分は可食部の中では比較的、β‐カロテン、ビタミンC、葉酸などが豊富です。

 ちぢみほうれん草も同様の栄養素を含んでいますが、その含有量には若干の差があり、ちぢみほうれん草のビタミンCは夏のほうれん草の3~4倍といわれています。一方、ほうれん草特有のあくやえぐみの原因となるシュウ酸は、ちぢみほうれん草の方が少ないので、くせのないおいしさが楽しめます。

ちぢみほうれん草の選び方、保存法、調理のポイント!

 購入の際は、葉が肉厚で鮮やかな緑色をしており、葉が根に近い位置から密生していてボリューム感があり、根元がみずみずしいものを選びます。葉先に枯れた部分があることがありますが、これは霜によって枯れたものなので、変色した部分を取り除けばOKです。

 保存する際は、乾燥に弱いため、湿らせた新聞紙などで包んでから野菜保存用の袋やポリ袋に入れ、根を下にして冷蔵庫の野菜室へ。たくさん入手した際は、下ゆでして水気を切り、冷凍保存がおすすめです。

 葉の裏側や根元に土が付いていることが多いので、調理の前に、まずはしっかりと水洗いして土を落とします。ちぢみほうれん草は通常のほうれん草よりも甘みが強く、えぐみが少なく、葉が厚いのにやわらかいので、生のままでも食べられます。軸や根元も甘いので、捨てずに活用しましょう。

 ゆでる際はすぐに火が通るため、ゆで過ぎに注意します。沸騰した湯に根元から先に入れ、軸がしんなりとしてきたら葉を入れ、火が通ったらざるに上げ、すぐに冷水に取り、しっかり絞ると、水っぽくならず、食感がよく、色鮮やかに仕上がります。また、お浸しやごま和え以外にも、汁物や鍋の具、炒め物にも適しています。チーズやベーコンなど動物性の食材とも相性がいいので、ぜひ試してみてください。

ちぢみほうれん草のバゲットキッシュ

ちぢみほうれん草のおいしさを生クリームとチーズが引き立ててくれるキッシュ。小さめのバゲットの中をくり抜いて作るので、生地を用意する必要がなく、手軽に作れます。見た目が華やかで、スライスした断面も魅力的なので、ホームパーティーなどにもぴったりなメニューです。

材料(小さめのバゲット1本分)
ちぢみほうれん草 1株
マッシュルーム 5個
ブロックベーコン 50g
バター 15g
2個
生クリーム(動物性) 100ml
ピザ用チーズ 50g
小さじ1/2
こしょう 少々
小さめのバゲット 1本
作り方
  1. ちぢみほうれん草はよく水洗いし、しっかりと水気を切ってざく切りに、マッシュルームは薄切りに、ベーコンは短冊に切ります。バゲットは上を切り取り、中身をくり抜いておきます。
  2. フライパンにバターを入れて中火にかけ、①のちぢみほうれん草、マッシュルーム、ベーコンを入れて炒め、全体にしんなりとしてきたらくり抜いてひと口大にちぎったバゲットの中身を加えてさっと炒め合わせ、火から下ろして粗熱を取ります。
  3. ボウルに卵と生クリームを入れてしっかりと混ぜ合わせ、ピザ用チーズ、塩、こしょうを加えて混ぜ合わせ、①のバゲットの器に詰め、180 ℃のオーブンで20分ほど焼きます。
*ヒユ科

・葉が肉厚で鮮やかな緑色をしており、葉が根に近い位置から密生していてボリューム感があり、根元がみずみずしいものを選びましょう。
・種類:「寒味・極み」、「雪美菜」、「寒締め吾郎丸」、「朝霧」など。

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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。