豆の仲間である「えんどう」を若採りし、豆が成長する前に、さやの食感と風味を楽しむ「さやえんどう」。開花15日ほどの若いさやを食べる「きぬさやえんどう」は、料理の彩りなどでおなじみです。この「きぬさや」という名は、さや同士がこすれ合う音が衣擦(きぬず)れに似ていることから付いたとする説があり、なんとも和の風情を感じます。

全国各地で生産されていますが、農林水産省が発表した令和6年産野菜生産出荷統計によると、全国の総出荷量12,600トンのうち、第1位はその1/3以上を占める鹿児島県の4,400トン、2位は愛知県1,280トン、3位は熊本県859トン、4位は福島県772トン、5位は和歌山県568トンと続きます。
鹿児島県や熊本県では11月から5月、和歌山県では9月下旬から5月、愛知県では1月から4月、福島県では5月下旬から6月にかけて出荷されますが、もっとも出回るのは3月から5月です。
さやえんどうの歴史と種類
「えんどう」の原産は中央アジアから中東、地中海沿岸にかけてと考えられているそうです。人類との関わりはとても古く、なんと新石器時代の遺跡から種子が発見されており、ツタンカーメン王墓の副葬品からも「えんどうまめ」が見つかっているのだとか。もともとは麦類の間にあった雑草で、マメ科の植物の根がやせた土壌を肥沃にしてくれる根粒菌を持つことから、古代ギリシャやローマ時代の麦作とともに栽培されてきたのではないかといわれています。日本へは奈良〜平安時代頃に中国から伝来したとされ、本格的な栽培は明治時代に入ってからになります。
「えんどう」には食べる目的によって5つの顔があります。まずは、若採りして、さやを食べる「さやえんどう」。そして、グリーンピースのように、さやの中の甘くみずみずしい実だけを食べる「実えんどう」。さらに、実が成長してもさやがかたくならず、未熟な実とさやの両方を食べる「スナップエンドウ」。また、えんどうの若芽は「豆苗」としておなじみです。ここまでの4つは野菜ですが、5つ目の「えんどうまめ」は、完全に成熟した豆を乾燥させて収穫するため、乾燥豆(豆類)として扱われます。
そして「さやえんどう」には大きく分けて4つの種類があります。まずは定番の「きぬさやえんどう」。さやが5~6センチと小型で、「姫みどり」「美笹」などの品種があります。「きぬさやえんどう」を大きくしたような形で、「オランダサヤエンドウ」のように、さやが10センチ以上になる「大さや種」もあります。肉厚でさやがふっくらとした、実とさやの両方を食す「スナップエンドウ」には、「ニムラサラダスナップエンドウ」「ビッグスナップ」「スジナインスナップ」などの品種があります。さやとともに「きぬさやえんどう」よりも大きくなる実を食べる「さとうえんどう」は、「きぬさやえんどう」を改良したもので、糖度の高さが名の由来となっており、「さとうざや」とも呼ばれます。
さやえんどうの栄養学
「さやえんどう」100g当たりの栄養価を確認してみると、美肌や体内でのコラーゲン生成に欠かせないビタミンCは60 mgと温州みかんの2倍近くも含まれており、赤血球の生産を助ける葉酸は73μg、体内でビタミンAとなって粘膜や皮膚を健やかに保つのに役立つβ-カロテンは560μg、たんぱく質は3.1g、食物繊維は3.0g含まれています。以上の栄養価はいずれも、さやいんげんやスナップエンドウよりも比較的多く含まれており、さやごと食べる豆の仲間の中でも、とても優秀な野菜だといえるのではないでしょうか。
さやえんどうの選び方、保存法、調理のポイント
へたから先端まで鮮やかな緑で、つやと張りがあり、豆が成長しておらず、さやが薄いものを選びます。白いひげがピンとしているものが新鮮です。
すぐに使わないときは、乾燥防止に湿らせたキッチンペーパーで包んでからポリ袋に入れ、冷蔵庫の野菜室で保存すれば数日〜1週間程度は日持ちします。
調理の際は、へたを折り、豆の入った側へ引っ張って筋を取り、反対の端の先端を折り、そのまま逆側の筋を引っ張ると、すべての筋が取れます。
炒め物、和え物、煮物、卵とじ、汁物、ちらし寿司、三色そぼろ弁当など、様々な料理に活躍してくれますが、火を通し過ぎると食感も色も悪くなってしまうので、短時間で調理するのがポイントです。
ほのかな甘みとシャキシャキとした食感を楽しむなら、塩ゆでがおすすめです。1Lの水に小さじ2の塩を加え、沸騰したらさやえんどうを入れ、1分ゆでたらザルに上げ、すぐに冷水にとって冷まします。長めに保存したいときは、この状態で水気を拭き取り、ラップの上に並べて包んで冷凍すれば、1枚ずつ使えて便利です。
きぬさやえんどうとポテトのサラダ
さやえんどうの美しい緑色とシャキシャキの食感がアクセントになるポテトサラダ。じゃがいもはつぶさず、粉ふきいもにしてから味付けしました。ゆで卵はミモザにしましたが、縦4等分に切ってから横5ミリの厚さに切って混ぜても美味です。フェンネルは、ディルやイタリアンパセリなど、お好みのハーブでも。

材料(2人分)
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きぬさやえんどう |
10本 |
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じゃがいも |
2個(250g) |
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ゆで卵 |
1個 |
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フェンネル |
1枝 |
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マヨネーズ |
大さじ4 |
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酢 |
大さじ1 |
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塩こしょう |
少々 |
作り方
- きぬさやえんどうは筋を取り、塩ゆでにして冷水にとって冷まし、水気を切って半分の長さに切ります。
- じゃがいもは皮をむいて食べやすい大きさに切り、水にさらしてから鍋に入れ、かぶる程度に水を入れて中火にかけ、沸騰したら弱火にして10~15分ほど加熱し、竹串がスッと通ったら火を止めて湯を切り、鍋をゆすって粉をふくまで水分をとばし、酢を回しかけて全体になじませます。
- 2にマヨネーズを加えて全体にからめ、塩こしょうで味を調え、刻んだフェンネルの葉を加えて混ぜ、器に盛り、包丁で刻んだゆで卵の白身とフォークでつぶした黄身を盛り付けます。
*マメ科エンドウ属
・へたから先端まで鮮やかな緑で、つやと張りがあり、豆が成長しておらず、さやが薄いものを選びます。白いひげがピンとしているものが新鮮です。
・種類:きぬさやえんどう(「姫みどり」「美笹」など)、大さや種(「オランダサヤエンドウ」など)、スナップエンドウ(「ニムラサラダスナップエンドウ」「ビッグスナップ」「スジナインスナップ」など)、さとうえんどう