菜果図録
春に花咲く冬野菜 春菊

 ひときわ寒さが募るこの季節。食卓の定番といえば鍋料理ですね。白菜、長ねぎ、しいたけ、えのきだけ、そして欠かせない名脇役が春菊です。11月から2月にかけて収穫の最盛期を迎え、春に愛らしい黄色の花を咲かせることから、春菊と呼ばれ、関西などでは「菊菜」とも呼ばれています。

 原産地は地中海沿岸で、食用とされているのは日本や中国など東アジア地域だけなのだとか。英語ではクラウン・デイジーと呼ばれ、欧米では鑑賞用の植物として愛されているそうです。日本へは室町時代には伝わっていたとされ、江戸時代の「農業全書」には栽培方法が記載されています。
 都道府県別の出荷量の第1位は大阪府2980t、次いで千葉県2450t、群馬県2010t、福岡県1850t、茨城県1700tとなっており、全国各地で生産されています(農林水産省 令和元年 作物統計より)。

個性いろいろ!各地の春菊

 葉に深い切れ込みがたくさん入った、おなじみの春菊は「中葉種」で、香りが強めなのが特徴です。関東では、茎が立ち上がって育つ「株立ち中葉」が主流で、根元を切って収穫します。一方、関西では、成長すると株が横に張ってくる「株張り中葉」が多く、根付きのまま収穫します。また、九州や中国地方では、葉が大きくて厚みがあり、切れ込みが浅く、香りが控えめな「大葉種」が栽培されています。特に葉の切れ込みが小さい「丸葉系」は「おたふく春菊」とも呼ばれ、アクが少ないため、生食にも向いています。さらに、えぐみや苦味が少なく、生食に適した「サラダ春菊」や、茎まで生食できる「スティック春菊」など、サラダ向けの品種もあります。

ベータカロテンは小松菜の約1.5倍!

 春菊に含まれる栄養素の中で、特に注目したいのがベータカロテンです。春菊100g当たり4500μgで、葉野菜の仲間のほうれん草4200μg、小松菜3100μgよりも多く含まれています。このベータカロテンは体内でビタミンAとなり、ウイルスや細菌が侵入する入口となる粘膜を健やかに保つ力が期待されるため、今こそ積極的にとりたい野菜の一つです。
 また、春菊特有の香りは、アルファピネンやペリルアルデヒドといった芳香成分によるもので、胃腸の働きを促す効果やリラックス効果があるといわれています。そのフレッシュな香りは、野菜として食べるだけではなく、和製ハーブとして使うと、料理の幅が広がりそうです。ちなみに、香りや食感を生かして調理するには、生のまま食べるか、さっと火を通す程度にとどめ、加熱し過ぎないのがポイントです。
 店頭で選ぶ際は、葉がピンとして張りがあり、緑色が濃いものを。春菊はとても傷みやすいため、購入の際は葉先が黄色くなったものやしおれたものは避け、新鮮なうちに早めに使いきりましょう。


春菊のベーコン&温玉サラダ

 春菊の香りが苦手という方にも、ぜひオススメしたいサラダです。今回はサラダ春菊を使いましたが、通常の春菊の場合は、若い柔らかな葉を選んで作ってみてください。

作り方(2人分)
  1. 春菊1パックは柔らかい葉を摘み、よく洗って水気を切ります。
  2. フライパンに、1.5cm幅に切ったベーコン2枚、オリーブオイル大さじ2を入れて中火にかけ、温まったら火を弱めてカリカリになるまで炒め、おろしにんにく小さじ1、酢大さじ2、塩こしょう少々を加えてサッと混ぜ、火を止めます。
  3. 皿に①を盛り、中央に温泉卵をのせ、熱いうちに②を回しかけ、粉チーズ大さじ1をふります。全体をよく混ぜて、お召し上がりください。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。