菜果図録
お寺で発見された柑橘! はっさく

 温州みかん、夏みかん、甘夏、ポンカン、清美、はるか、伊予柑、デコポン、紅まどんな・・・・・・ちょっと思い浮かべただけでも驚くほど多彩な種類がある柑橘類。その中でも素性の面白さで群を抜くのは、はっさくかもしれません。はっさくは、江戸時代の1860年頃に広島県尾道市因島にある恵日山浄土寺で発見されました。「八朔(旧暦の八月朔日=新暦の9月初旬)には食べられる」という当時のご住職の言葉が名前の由来といわれていますが、実際の旬は1月から4月にかけての時期です。

 最近は糖度の高いフルーツに人気が集まっていますが、はっさくはひと味違い、上品な甘さ、すっきりとした酸味、特有のほろ苦さ、サクサクとした食感が魅力です。
 令和2年産特産果樹生産動態等調査によると、全国の収穫量約25,716トンのうち、7割を超える18,367トンが和歌山県産、次いで広島県が4,339トンとなっており、愛媛県、徳島県、静岡県と続きます。

はっさくの仲間

 はっさくはブンタン(文旦)に近い系統ではないかと考えられており、枝変わり品種として紅はっさくがあります。1951年に広島県尾道市内の農園で見つかり、その発見者の名前を冠して「農間紅八朔」と名付けられました。通常のはっさくよりも果皮の赤みが濃く、糖度は高め、酸味は控えめで、果汁が多く、とても美味なのだとか。また、収穫期が11月から2月と早い「早生八朔」は、皮が薄めで果肉がつまっており、通常のはっさくよりも皮がむきやすいようです。和歌山県では霜が降りない温暖な気候風土を生かし、2月下旬から3月頃まで木にならせて完熟させてから収穫する「木成り八朔」「さつき八朔」もあります。

はっさくの栄養学

 はっさく砂じょう(薄皮の中の果肉)100g当たりの栄養価をチェックしてみると、体内の余分な塩分(ナトリウム)の排出を助けるカリウムが180mg、免疫力の維持や美肌に欠かせないビタミンCは40mgで温州みかんよりも多く含まれています。また、食物繊維の中でもお通じの改善に役立つ不溶性食物繊維は、砂じょうだけで温州みかんの6.5倍に当たる1.3gも含まれていますので、便秘が気になる方には柑橘類の中でも特にオススメです。
 ちなみに、はっさく特有のほろ苦さを生み出す成分は、グレープフルーツなどにも含まれているポリフェノールの一種であるナリンギンによるものです。このナリンギンは、抗酸化作用や食欲抑制作用、血流を改善する働き、抗アレルギー作用などが期待されていますが、高血圧などの薬と一緒に摂取すると、薬の作用が強まったり、副作用が現れる可能性がありますのでご注意ください。

はっさくの選び方、保存法、調理のコツ!

 皮が鮮やかな橙黄色で、張りがあり、ヘタが緑色で、手に持ってみてずっしりと重く、爽やかな甘い香りがするものを選びます。
保存する際は、直射日光が当たらない風通しのよい冷暗所であれば1~2週間は保存できますが、気温が高いときはポリ袋などに入れて冷蔵庫の野菜室で保存しましょう。酸味が強いときは、数日待ってから食べると、酸味が少し和らぎます。
 果皮もじょうのう膜(果肉を包む薄皮)も厚いので、ナイフで皮に切り込みを入れてからむき、袋をむいて果肉だけを食べます。生食の他、マーマレード、コンポート、ゼリーなどにしても美味です。

はっさくのハニーマスタードマリネ

 甘さだけではない大人好みのはっさくの美味しさは、シーフードとサラダにすると相性抜群です。今回はスモークサーモンといか刺身を使いましたが、マグロ、鯛、たこ、帆立など、おこのみの刺身で作ってみてください。きゅうりでクルリと巻いて仕上げれば、食卓が華やぐ前菜になりますよ。

材料(2人分)
はっさく 1個
きゅうり 1本
紫たまねぎ 1/8個
かいわれ菜 少々
スモークサーモン 4枚
いか刺身 4切れ
オリーブオイル 大さじ2
ワインビネガー 大さじ1
粒マスタード 小さじ2
はちみつ 小さじ1
ふたつまみ
作り方
  1. はっさくは皮をむき、薄皮をむいて果肉だけを取り出し、4個はそのまま飾り用に取り置き、残りは1個を4等分に手で裂きます。きゅうりは縦半分に切り、断面をピーラーで引いて薄く4枚をスライスし、残りはさらに縦半分に切ってから8ミリ厚に切ります。紫たまねぎは5ミリ角に切り、スモークサーモンといか刺身は1センチ角に切ります。
  2. オリーブオイル、ワインビネガー、粒マスタード、はちみつ、塩を合わせ、切った材料を和えます。
  3. 皿の上にきゅうりスライス2枚で丸く円形を作り、②を詰め、かいわれ菜をのせ、はっさくの果肉を添えます。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。