菜果図録
年中あるけれど初夏から夏が旬!さやいんげん

 いんげん豆を若採りし、さやごと食べる、さやいんげん。年間を通じて店頭に並んでいますが、特に初夏から夏にかけて多く出回ります。国内収穫量38900トンのうち、第1位は千葉県6030トン、第2位は北海道5050トン、第3位は福島県で3230トン、第4位は鹿児島県で2370トンと続き、5位は沖縄県2070トンで、他にも全国各地で生産されています(令和2年産都道府県別出荷量より)。
 産地ごとの収穫期を見ると、4~6月は鹿児島県産、5~7月は千葉県産、7~9月は北海道産と福島県産、10~12月は再び鹿児島県産、12~翌5月は沖縄県産と途切れることなく続き、年間を通じて国産いんげんを入手することができるのです。

 いんげんの原産地は中南米で、17世紀頃にヨーロッパへ、その後、中国へと広まりました。日本へは江戸時代の1654年、中国から日本へ渡った隠元禅師が伝えたといわれ、それが名前の由来とされています。古くは豆だけを食用としていましたが、明治時代に若いさやごと食べる種類が欧米から導入され、野菜として親しまれるようになりました。

種類いろいろ!豆もいろいろ!

種まきから収穫までの期間が短く、年に3度も収穫できることから、「三度豆」と呼ばれることもある、さやいんげん。大きく分けると「つるあり種」と「つるなし種」があり、つるあり種は収穫時期が長く、つるなし種は種まきから収穫までの期間や収穫時期が短いのが特徴です。
 さやの形には、適度な歯ごたえがある「丸さや」と、柔らかめな食感の「平さや」があります。よく一般的に食べられているものは、すらりとした丸さやの「どじょういんげん」で、筋の少ない「サーベルいんげん」も丸さやの品種です。平さやの代表といえば、幅広で平たく大きなさやの「モロッコいんげん」です。他にも、アントシアニンを豊富に含む紫色の「紫いんげん」、さやが黄色の「黄色いんげん」なども、さやいんげんの仲間です。
 豆として食べるいんげん豆には、カスレなど伝統的なフランス家庭料理などにも用いられる「白いんげん豆」、煮豆でおなじみの「金時」などの「赤いんげん豆」、和菓子の白あんなどに使われる「手亡(てぼう)」、メキシコ料理にもよく使われる「うずら豆」、煮豆の王様とも呼ばれる高級品種の「虎豆」など、実に多彩な種類があります。

さやいんげん&いんげん豆の栄養学

 100g当たりの栄養価としては、筋肉などの材料となるたんぱく質は1.8g、体内でビタミンAとなって肌や粘膜を健やかに保つのに役立つベータカロテンは520μgでピーマンよりも多く、造血のビタミンとも呼ばれる葉酸は50μg、腸内環境を整えてくれる食物繊維は2.4 g含まれており、とてもすぐれた緑黄色野菜であることが分かります。
 一方、乾燥いんげん豆100gには、たんぱく質はさやいんげんの11倍以上にあたる22.1g、体内の余分な塩分の排出を助けてくれるカリウムは1400mg、貧血の予防や改善に摂取したい鉄は5.9 mg、胎児の健やかな成長に欠かせない葉酸は87μg、食物繊維は19.6 gも含まれる一方、脂質は乾燥大豆の約1/8にあたる2.5gしかありません。たんぱく質と食物繊維を豊富に含む低脂肪の健康食材として、いんげん豆をぜひ積極的に活用したくなりますね。

さやいんげんの選び方・保存法・調理のコツ!

 太さが均一で、中の豆の粒が小さく、緑色が鮮やかで、ハリがあり、さやの先端までピンとして新鮮なものを選びます。曲がっていても味に影響はないといわれていますが、太過ぎるものや豆が大きく育っているものは、筋が硬い場合があります。
 保存の際は、ポリ袋などに入れ、冷蔵庫の野菜室で保存し、2~3日以内に使い切りましょう。大量に入手したときは、硬めに下ゆでしてから冷凍保存し、凍ったまま加熱調理に使います。
 調理の際は、塩をまぶして板ずりしてから下ゆですると、色鮮やかにゆで上がり、青臭さも取れます。さやいんげんは、煮物、和え物、天ぷら、おひたし、炒め物、サラダなど様々な料理に向く万能野菜です。歯ごたえを楽しむなら、硬めにゆで、繊維に添って縦や斜めに切るのがおすすめです。万能ねぎのように小口切りにすると、料理の彩りとしてトッピングにも使えます。また、細長い形を生かして肉巻きなどに使ったり、揃えて並べてサラダ風に仕上げても素敵です。


さやいんげんのエッグ・イン・クラウド添えサラダ

 エッグ・イン・クラウドとは、卵の白身のメレンゲに黄身をのせ、オーブンで焼いたもの。さやいんげんをさっとボイルし、ドレッシングで和えてさらに並べ、パンにのせても美味しいエッグ・イン・クラウドをのせてみました。卵を崩しながら、ふわふわのメレンゲ、トロリとした黄身、コリコリとしたさやいんげんの食感をお楽しみください。

材料(1人分)
さやいんげん 10本
1個
オリーブオイル 小さじ2
りんご酢 小さじ2
適宜
こしょう 少々
作り方
  1. さやいんげんは筋を取り、塩で板ずりし、熱湯で2分ほどゆでて氷水にで冷やし、水気を拭き取り、長さを切りそろえます。
  2. 卵は白身と黄身に分け、ボウルに白身と塩ひとつまみ、りんご酢小さじ1を加え、泡立ててメレンゲを作り、クッキングシートに丸く盛って中央にくぼみを作り、黄身をのせ、180℃のオーブンで5分ほど焼きます。
  3. オリーブオイルにりんご酢と塩こしょう少々を加えて混ぜ、①のさやいんげんにからめ、皿に並べ、②をのせ、塩こしょう少々をふります。
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written by

堀 基子

/文・写真

野菜ソムリエ上級プロ。J Veganist。冷凍生活アドバイザー。アスリートフードマイスター3級。ベジフルビューティーセルフアドバイザー。ジュニア青果物ブランディングマイスター。アンチエイジング・プランナー。受験フードマイスター。第6回・第8回野菜ソムリエアワード銀賞受賞。